NO.255
2003/05/14 (Wed)
The Moment of Truth: Tuck & Patti Sung for Me
とどめ。

「パリ、フランスのあちこちの街、イタリア、オーストリア、スペイン、オランダ・・・。どこへ行ってもこの曲をみんなが歌ってくれます。みなさんにもぜひ一緒に歌ってほしいと思います」  こう言ってパティーが観客に「タイム・アフター・タイム」の歌い方を教えます。観客を3つのパートに分けて、それぞれのコーラスを教え、最後に一緒に歌わせ観客と一体となった「タイム・アフター・タイム」が完成です。毎度のことですが、素敵な瞬間です。いつも彼らのライヴには心暖まります。

その「タイム・アフター・タイム」に続いて「歌うことが私の生命線」と歌う「ライフライン」を終えたタックとパティーと、今回だけ特別に参加しているキーボード奏者のフランクが横に一列に並び手をつなぎ、お辞儀をしました。続く拍手。アンコールはないのでしょうか。

パティーがマイクを取りました。「今日は特別なEメールをもらいました。彼はとある曲をリクエストしてきました。ひょっとしたら彼は恋をしているのかもしれません。その曲を歌います。『ホワット・ア・ワンダーフル・ワールド』。マサハル、これをあなたのために」

「わお! やったあ」 一緒にいたM氏とY氏とNさんが僕を見る。本当は手をあげようと思ったのだが、「恋してるかもしれない」なんて言われたら、シャイな僕はとうていあげられません。前回だったかその前だったか、パティーがステージで「何かリクエストがあったら、私たちのウェッブからEメールをください。できればそんなリクエストを歌ってみたいと思うわ」と言っていたのを覚えていたのです。

そこで、僕はその日彼らに「僕は、長年のあなたたちのファンです。今日ブルーノートにショウを見に行きます。ぜひサム・クックの『ワンダフル・ワールド』を歌ってください」とメールしていたんです。ライヴの間にはすっかりリクエストしたことを忘れるほどショウを「集中して」見ていたんですが、最後の「ライフライン」を歌い終わった後に、「あ〜、そういえばリクエスト、歌ってくれなかったなあ」などと思っていたわけです。

そんなときに、パティーが「ワンダフル・ワールド」を歌い始めたので、かなり感激しましたよ。彼女が歌っている間なんだか体が熱くなりました。この曲は彼らの94年のアルバム 『ラーニング・ハウ・トゥ・フライ』 の日本盤のボーナストラックとして収録されている曲です。初めてこの彼らのヴァージョンを聴いたとき、「なんでこれがボーナストラックなのか」と思いました。そんな、もったいない。宝物は世界でシェアしなきゃ。彼らの中で一曲選べと言えば、間違いなく僕はこれを選びます。サム・クックのオリジナルも素晴らしいのはもちろんのことですが、このタック&パティーのヴァージョンもすっかりパティー節になっていて心に響きます。彼らも本当に音楽の理解度(理解の度合い)がすばらしい。他人の曲をすっかり自分のものに消化してるわけです。

「歴史も、生物学も、科学の本もわからない。でも、あなたを愛しているということだけはわかっている。もし、あなたも私のことを愛してくれるなら、最高に素敵な世界になるのに。自分は秀才なんかじゃないけれど、でも、努力している。だってもし秀才になったら、あなたの愛を勝ち取れるかもしれないから」 男性シンガーが歌っても、女性シンガーが歌っても、文句なし。名曲は時代を超えます。

タックがギターを弾きパティーが歌っていた約4分間は僕にとっては天国にいるような至福の瞬間でした。リクエストしてみるものですねえ。(笑) 

お礼を言いに、ちょっとだけ楽屋におじゃましました。「『ワンダフル・ワールド』歌ってくれてありがとう」 「メールありがとう」とパティー。「これは最近はあんまり歌わないのですか」 「以前は何度かやってたと思うけど、最近はしばらくやっていなかったよ」とタックが言います。「ところで、もう日本に何回来たか、勘定できないでしょう」と言うとタックが「22回かな、今回が23回めかな」と答えます。そ、そ、そんなに。親日派もいいところですね。

いつ聴いても音のいいタックのギターは、1949年製のギブソンだそうです。パティーのマイクの手元に小さな箱がついています。あれは、モニターアンプで、ギターの音と彼女の声、今回の場合はピアノなどの音も耳元のイアフォーンに伝えるボックスです。同様にタックも耳元でモニターが聴こえるようになっています。二人とも髪の毛で見えませんが、イアフォーンをしているわけです。この仕組みはもうすでに20年くらい使っているとのこと。音をモニターして、イアフォーンで聴くシステムは、スティーヴィーがかなり昔から使っていて、それを開発した人と同じ人がタックたちのも作っているそうです。「出ている音がきっちり聞こえているほうがいいからね」と説明されました。

彼らのウエッブは http://www.tuckandpatti.com/index.shtml  ここから彼らにメールを送ることができます。必ずしも返事が来るとは限りませんが、すべてのメールには目を通しているそうです。

今ステレオからリピートで何度もかかっているのは彼らのCDで「ワンダフル・ワールド」。なんと素敵な世界なのでしょうか。次のリクエストはアル・グリーンの「レッツ・ステイ・トゥゲザー」あたりか。(笑) いやあ、今夜はタック&パティーにとどめをさされました。ぐさって感じです。

( タック&パティー、東京ブルーノート、5月12日・月曜から17日・土曜まで)

ブルーノートのHP
>http://www.bluenote.co.jp/

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Diary Archives by MASAHARU YOSHIOKA
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